コラムを書いた人
黒津晴良
トレーナーズラボ第11期生の黒津晴良です。
こんにちは!トレーナー黒津です。
今回から体づくりにおいて、食事の実践的なお話で「ケトジェニック」についてまとめていきます。
パーソナルトレーナーはお客様への体づくりのご案内の時に、お食事の面からもサポートする必要があるのは明らかです。そこでなんとなく「たんぱく質多めで」「糖質少なめで」とお伝えしても曖昧な意思疎通になりそうですし、それは避けなければいけません。
そこで糖質制限の中でも「ケトジェニック」という食事法を利用し、科学的に認められた効果を狙ってご案内することで、より食事内容の基準を正確に見定めることができ、お客様へもより丁寧にご案内することが可能です。
パーソナルトレーナーはその確かな知識と利用法を駆使して、お客様の目標達成と満足へと導くことが重要です。ケトジェニックを初めて聞く方も知っている方もぜひ深掘りの機会にしていただければと思います。
では、さっそくいってみましょう。
ケトジェニックとはなんとなく、糖質を摂らないこと・・?と曖昧に知っている方もいらっしゃるかもしれません。そういう面もありますが改めて確認していきましょう。
ケトジェニックとはダイエット目的や体脂肪を減らすために利用する食事法のことで、結論としては、体のエネルギー源の大半を糖質から脂質へと変えて体脂肪を燃焼させることなのです。糖質が不足すると、体の中では脂肪が分解されケトン体という物質が発生します。それが糖質の代わりに体を動かすエネルギー源になります。
この状態をケトーシスの状態とも言いますが、体のエネルギー源の仕組みを切り替えることで体脂肪を減少させていくことが目的です。
さあ、ここでロカボダイエットという言葉も聞いたことある方も多いと思いますがこの違いは何?といった疑問も出てきます。
ロカボとはローカーボ(低糖質)からきた言葉で、最近はコンビニでも関連商品がたくさん出ていますよね。ケトジェニックの詳しい方法はあとで記述していきますが、ロカボは糖質制限の一種で、ケトン体を発生させることが目的ではなく、食事後の血液中の血糖値上昇をコントロールすることで、脂肪を蓄えないようにするという考え方です。ですので緩やかに徐々に始めることもできますし、続けやすいのも特徴です。
一方ケトジェニックは、糖質を極端に制限して、その代わり第二のエネルギー源である脂質をたっぷり摂取することでエネルギー源の仕組みを切り替え、ケトーシスの状態にします。体脂肪燃焼には非常に効果的であり科学的に認められた効果も様々です。
それではそのケトジェニックの効果についても確認していきましょう。
ではさっそくご紹介していきます。
1、脂肪燃焼効果 これまでのお話のとおりケトーシスの状態から体脂肪燃焼効果が得られます。
2、むくみ予防 糖質は水分とくっついているのが特徴ですが、それが体内から抜けるためむくみ予防につながります。
3、アンチエイジング たんぱく質もしっかり摂ることと、良質な油を摂ることで質が変化してアンチエイジングにつながります。
4、免疫力UP 糖質を抑えるため血糖値が安定します。それにより免疫の仕事をするホルモンがきちんと役割を果たし免疫力がUPします。
5、短い期間での体重コントロール 糖質を抑えると水分も抜けて体脂肪も落ちていくため効率的にコントロールできます。
6、老化防止 糖の過剰摂取は老化を招きます。それが解消されることで老化防止につながります。
7、脳の活性化 良質な脂質と適切なたんぱく質の摂取により、脳のエネルギー源が糖からケトン体に変わります。それにより脳の活性化につながります。
8、食後の眠気をおさえる 血糖値の急上昇が防げるため、インスリンホルモンの過剰分泌がなく、低血糖症状がおきづらくなります。
9、空腹感が少ない 血糖値が激しく上がったり下がったりしないので、イライラや空腹が解消されます。
こんなにもあるのですね!
糖質はエネルギー源なのは確かですが、一方では中毒性もあり、糖質過多により肥満につながります。ケトジェニックによる効果をしっかり理解して適切に利用すれば健康的に痩せられることをパーソナルトレーナーはきちんと理解しておく必要があります。
ではここからケトジェニックの実際の方法に入っていきますが、まず準備段階として「基礎代謝」について最初に振り返っていきたいと思います。
基礎代謝とは人が生きていくうえで何もしなくても必要な最低限のエネルギー量のことです。人は何もしなくても、心臓を動かしたり体温調節など行ってエネルギーを使用しています。その最低限のエネルギーのことなのです。
基礎代謝量は体組成計でも出てきますが、計算でもおおよその目安を出すことが可能ですのでご紹介します。
まずは身長から「標準体重」を算出します。
標準体重=身長(m)×身長(m)×女性21・男性22という式を使用します。例えば身長170cmの男性であれば、1.7×1.7×22=63.58kgとなります。
そして1日の体重1kgあたりの基礎代謝量のことを基礎代謝基準値といいますが、これと標準体重をかけると基礎代謝量が計算できます。
基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal)×標準体重(kg)
例えば、30~49歳の男性の基礎代謝基準値は22.3kcalと設定されています。つまり先ほどの数値から
22.3kcal×63.58kgで1417kcalが基礎代謝量だと計算することができます。
では基礎代謝はこれでわかりました。あとは運動をしたり、またはあまり動かず座っていることが多かったり・・それらがどの程度エネルギーとして使用されるのかということです。
1日に必要なエネルギー量の出し方もご紹介します。
1日に必要なエネルギー量(kcal)=基礎代謝量(kcal)×身体活動レベル
この式に沿って算出します。身体活動レベルは3段階ありますが以下のとおりです。
低い(1.5)・・・生活の大部分が座位の場合 普通(1.75)・・・座位中心だが、仕事で作業、接客、通勤があり、家事や軽いスポーツをする程度の場合 高い(2.0)・・・立位の多い仕事をしたり、スポーツなど活動的な習慣がある場合
先ほどの1417kcalの男性の例で、普通レベルの活動のときは、1417(kcal)×1.75となり、2479kcalが1日に必要なエネルギー量と算出することができます。あくまで目安ですが、参考になる基準となります。
次にケトジェニックを行うにあたり栄養バランスをどのように設定するかのお話です。
一般的にPFCバランスといい、
Protein(たんぱく質)1g:4kcal Fat(脂質)1g:9kcal Carbohydrate(炭水化物)1g:4kcal
この3大栄養素を管理して食事を調整していきます。具体的には・・
【ケトジェニックのPFCバランス】
P:30% F:60% C:10%
361と覚えましょう。糖質はかなり抑えて、脂質をたくさん摂取することが大切な食事法となります。
では次にその具体的な計算の仕方などご紹介していきます。
ではまず方法についてです。さきほどの例の男性だと1日の推定必要エネルギー量が2479kcalとなりますが、理論上1日に必要なエネルギーを下回る摂取カロリーであれば、
摂取カロリー < 消費カロリー が成り立ち、減量につながる食事コントロールとなります。
これを踏まえ、おおよそ目安で1日に500~1000kcalアンダーカロリーになるように設定していきます。
体脂肪は1kgで7200kcalありますので、1日500kcalアンダーであれば7200÷500で約2週間で1kgの体脂肪燃焼が期待できる数値となります。
ここで注意ポイントです。じゃあ、単純に2479kcalから500~1000kcalマイナスで食事していけばOK!という考え方に陥ることです。
あくまで人によるので状況に合わせることが大事ですが、簡単に小食にするというのは危険で栄養とカロリーが不足しすぎて体が防衛反応になり体重が落ちなかったり、エコモードになり基礎代謝が落ちて、本末転倒な結果につながることも考えられます。
ですので、まずスタートとしては推定1日消費カロリーよりやや低いカロリー設定で食事をし、筋トレや有酸素運動で消費カロリーを稼ぐようにしていきます。ここでパーソナルトレーナーが必要になってくるわけです。
その結果数日の数値の傾向をみて、食事のアドバイスをして少しづつでも体脂肪が徐々に減ってきているか確認していきます。増えるようであればカロリー設定を少しさげていく等サポートしていくのです。
次に計算方法です。仮に推定の1日に必要なエネルギー量が先ほどの例で2479kcalでしたので、2000kcalで1日の摂取カロリーを設定していきます。
2000に対してケトジェニックのPFCバランスを掛け算していきます。
2000×(P:30%)=600kcal 2000×(F:60%)=1200kcal 2000×(C:10%)=200kcal
そしてここから、それぞれが何グラムの摂取量なのか確認していきます。
2000×(P:30%)=600kcal 600÷4kcalで150g 2000×(F:60%)=1200kcal 1200÷9kcalで134g 2000×(C:10%)=200kcal 200÷4kcalで50g
推定ではありますが、このように算出ができます。つまり炭水化物は1日で50gだけにとどめるということです。少ないですよね。白米はお茶碗一杯で50g程度なのでそれぐらい極端に減らすわけです。
仮でこのように数値目標をたてて、数日の体組成の変化を見ていきます。徐々に減るようなら続けてみたり、変わらないようなら運動を薦めたり、カロリー設定の見直しを計ったりも一つです。
体重が落ちないのはカロリーだけが原因でなく、睡眠不足や、お通じなども関連することもあるので、総合的に判断していくことがパーソナルトレーナーには必要です。
それではケトジェニックの実践のポイントをご紹介します。
まず食事は朝昼晩の順でボリュームを4:4:2の目安で食べることが重要です。朝抜いてしまったから夕食挽回しようとすると、夜は活動もしないので脂肪になってしまう可能性もあります。バランスを大事にしましょう。
内容としてはまずは糖質をコントロールすることです。NGなのは炭水化物はもちろんですが、果物、野菜の根菜類も避ける必要があります。
そしてカロリー摂取の大半になってくる脂質の摂取です。これはから揚げなどの油でなく、良質な脂質である必要があります。詳しくは栄養学の記事でも触れていますが、魚の油やナッツやアボカドなどから摂取する必要があります。
あとはたんぱく質をしっかり食べることです。代謝をあげ、体の組織を構築します。筋肉を減らさないことが重要なのでここは抑えておきましょう。
最後に食物繊維もしっかり摂りましょう。きのこや海藻が良いですね。お通じは数値にダイレクトに影響します。腸内環境を整えましょう。
実際にやってみて気づくことも多いのがケトジェニックで、自分が思っているより身体活動レベルが高くないのではないかなど気づくこともあります。その時は軌道修正しながら仮にカロリー設定し、上記の管理をしっかりやっていく必要があります。
では、ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回は【第9回】に続きます。ケトジェニックに挑戦した私の経験も踏まえてお伝えしていければと思います。
次回もお楽しみに。
【第10回】パーソナルトレーナーである私が、生理学や栄養学の知識を駆使してローファットダイエットにトライした経験について
【第9回】パーソナルトレーナーである私が、生理学や栄養学の知識を駆使してケトジェニックにトライした経験について
【第7回】パーソナルトレーナーと栄養学 『VOL.2』
【第6回】パーソナルトレーナーと栄養学 『VOL.1』
【第5回】パーソナルトレーナーと生理学 『VOL.2』
【第4回】パーソナルトレーナーと生理学 『VOL.1』
【第3回】ボディーメイクに関する大会やコンテストは何がある?
【第2回】NSCA-CPTの受験費用は?気になる受験方法や試験内容について
【第1回】パーソナルトレーナーに必要とされる資格 NSCA-CPTについて