【第4回】パーソナルトレーナーと生理学 『VOL.1』

こんにちは!トレーナー黒津です。

さて、今回から「生理学」について調べていきたいと思います。

突然ですがエネルギーという言葉を普段使いますが、エネルギーとは何なのでしょうか。

それは「仕事をする能力」のことで、例えばものを動かしたり、光を出したり、音を出したり・・自然の中でいえば太陽の光や風の力など見えないところにたくさんのエネルギーの動きがあります。

人間の体の中でも同じようにエネルギーが作られ、利用され、再合成されるというエネルギーの動きがあるのです。

運動に携わるパーソナルトレーナーは運動とエネルギーの関わりを知っておくことでゲストへの適切な運動アプローチができますので、必ず理解しておくべきことなのです。

人間の体の内面について生理学を深掘りしていきます。

では、さっそくいってみましょう!

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1、代謝って何? 異化と同化について

さて、代謝って改めて言われるとわからない・・異化、同化?

「こりゃいかん・・どうかしちゃう・・」 (シーン・・)

冗談はさておき、異化と同化について探っていきましょう。

異化とは・・・大きい分子から小さい分子に分解することを指し、食べた栄養が小さい分子になったり、体の中の体脂肪や筋肉を減らすことをいいます。

同化とは・・・小さい分子から大きい分子に合成することで、体の中では筋肉になるといったことです。植物であれば太陽光のエネルギーでCO2とH2Oからデンプンを合成するといったことをいいます。

この二つをまとめて代謝といいます。栄養素や体脂肪などを分解することにより、エネルギーに変換する(=生命維持・活動に必要なエネルギーを得る)ということです。

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2、ATPとは何なのか?

さて、冒頭でエネルギーとは仕事をする能力だとお伝えしました。

風が吹いて風車が回転して風力エネルギーが発生する。こういったことは人間の体の中でいうと、炭水化物・脂質・たんぱく質という栄養素を摂取し、それを分解してエネルギーをつくり、体を動かす(仕事をする)といったことになります。

このエネルギー体のことを「ATP」(アデノシン三リン酸)といいます。Adenosine TriPhosphate というアルファベットの頭文字をとっています。

ATPは主に筋肉で使われて筋細胞にATPを貯蔵することもできます。

アデノシン三リン酸(ATP)は、アデノシンという物質に3つのリン酸基(P)が結合しています。

まずは、ATPが人間が筋活動を継続的に行うために必要なエネルギーのことなんだと理解しておきましょう。

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3、ATPの作り方1 「ホスファゲン機構」とは?

さてここからエネルギー(ATP)の作り方について探っていきます。

運動をするとATPがなくなってきてATPの供給(再合成)が必要になってきます。実は体の中ではいくつか再合成する方法があるので順に紹介していきます。

1つ目に「ホスファゲン機構」です。

はじめに縄跳びで二重跳びを連続でやるのを想像してみてください。おそらく10秒もやると息が切れてできなくなってしまうことと思います。

この時体の中のATPは活動エネルギーとして使われた後、ADP(アデノシン二リン酸)に変換されます。

ATPは、アデノシンが1つ(Aが1つ)とリン酸が3つ(Pが3つ)で成り立っていて、それがPが1つ減りADPとなるのです。

そして肝臓から、クレアチンリン酸(CとPからなる)という物質が出るとそこからPだけをADPにくっつけて再びATPになりエネルギーとして使われるようになるのです。

残ったクレアチンリン酸のCの部分は水分をとると流れます。うまく流れずにCが残ると尿酸値が高まり痛風の原因となります。

このサイクルをホスファゲン機構といいます。

縄跳びもしばらく休むとまた復活して二重跳びが再開できますよね。体の中でこのサイクルが働いてエネルギーが使えるようになるのです。

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4、ATPの作り方2 「解糖系機構」とは?

続いて「解糖系機構」です。

こちらは炭水化物(糖質)を分解して最終的にATPにする機構です。

解糖ということで糖を溶かすイメージが沸いたらまさにそのとおりです。栄養として摂取した炭水化物(お米やパン)は糖質を含みますが、それが分解されると、グルコースという血糖となり血中で循環されます。グリコーゲンとしても変換され肝臓や骨格筋にも倉庫として貯蔵されます。

グルコースがなくなるとグリコーゲン(倉庫)から補充されるイメージです。そのグルコースが分解の結果、最終的にピルビン酸となります。

筋トレのような酸素を必要としない無酸素運動を行うとこのピルビン酸は乳酸へと変換されます。

乳酸への変換のときにATPが生産されてエネルギーとして使用されるわけです。また時間が経つと乳酸はピルビン酸へと戻ります。

この一連のサイクルが解糖系機構です。

ここでのポイントは酸素を必要としない運動(筋トレ)をすることで炭水化物をエネルギーにして使用するということです。

筋トレ前にご飯を食べるのと食べないのとでは力の入り具合が違うのはこういう原理があるからなのです。

ちなみに、体内で乳酸が溜まり血中乳酸濃度が上昇すると、成長ホルモンが脳下垂体前葉より分泌されます。この点は次回記事でも触れていきます。

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5、ATPの作り方3 「酸化機構」とは?

最後は「酸化機構」です。

こちらは炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質を分解して最終的にATPにする機構です。

前パートの解糖系を踏まえていきます。これは無酸素運動での話でしたが、今度は有酸素での運動(ジョギングやエアロビクスなど)を行うと酸素の供給が十分であれば、炭水化物から変換されたピルビン酸は細胞のミトコンドリアに輸送されて、アセチルCoAが生成されてTCA回路というサイクルに入っていきます。

このTCA回路が回るときにATPが作られるのです。

有酸素運動を続けると、炭水化物が先に使用されてそのあとに脂質が使用され、最後にたんぱく質が使われていきます。こちらも同様にアセチルCoAが生成されてTCA回路に入ることによりATPが作られます。

3番目のたんぱく質の分解については次回の記事で詳しく触れていきます。

以上のことから運動するときに、ダイエットの場合まず筋トレをして炭水化物(糖質)をエネルギーにして減少させます。

その後にジョギングなどの低強度な有酸素運動を行って残りの炭水化物(糖質)のエネルギーを使用して体にある脂質(体脂肪)をエネルギーに変えていくのです。

これが逆になるとジョギングで炭水化物(糖質)を使用して続けて筋トレをしても糖質は減っているので力も出ず持続できません。疲れても結局体脂肪減少まで行き届かずという状況になるのでとても運動の順番も大事なのです。

ちなみに、酸化機構では運動を行っていない安静時でもサイクルが動いていて70%が脂質、30%が糖質から得ています。つまり基礎代謝(何もしていなくても生きていくのに必要なエネルギー)が高いとそれだけ脂質減少には有効となります。

専門用語も出てきましたが、運動の種類でATPの生成機構が分かれるんだというのを理解しておきましょう。

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6、まとめ

以上が生理学の導入になりますが、有酸素運動と言葉にしていてもその意味までは勉強するまではわかりませんでした。パーソナルトレーナーはこういった生理学も学ぶことにより、ゲストの目的に合わせた運動の選択やプランニングをしていくので、勉強してみて改めて大切さがわかりました。

それではここまでお読みいただきありがとうござました。

次回【第5回】は生理学のVOL.2として糖新生、運動強度、ホルモンについて続きをまとめていきます。

黒津晴良

コラムを書いた人
黒津晴良

トレーナーズラボ第11期生の黒津晴良です。

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