パーソナルトレーナー必須知識 栄養学編VOL.1
ボディメイクにおいて、運動よりも回数が多い食事は重要です。パーソナルトレーナーとしてお客様から食事に関する質問をいただくことは多いですし、自身のボディメイクでしっかり結果を出して説得力のある身体をつくりあげるためにも栄養学の知識は常々アップデートしていきたいものです。
目次
1.エネルギー消費量
1日のエネルギー消費量は、①基礎代謝量②食事誘発性熱産出③活動時代謝量の3つに分けられます。
①基礎代謝量・・・覚醒状態にあるときに、生命活動を維持するのに必要な最小限のエネルギーです。1日のエネルギー消費量の60%という最も多くの部分を占めています。睡眠状態では基礎代謝量よりもエネルギー消費量は低くなりますが、夕食や就寝前活動による影響が残っているため、就寝直後は基礎代謝量よりも大きな値となります。結果、睡眠中のエネルギー消費量を平均すると基礎代謝量と大きく変わらないといわれています。基礎代謝量は、身長・体重・年齢・性別等に影響を受けます。
②食事誘発性熱産出・・・食事を摂ることによって、その後数時間にわたりエネルギー消費量が高まることを言います。
③活動時代謝量・・・運動や生活活動で身体を動かした際のエネルギー消費量です。
2.エネルギー摂取量と食欲の調整
エネルギー消費量と摂取量のバランスをエネルギー収支と呼びますが、体重変動は、このエネルギー収支がプラス又はマイナスに転じた結果として起こります。そのため、減量に対するアプローチとして、①エネルギー消費量の増加②エネルギー摂取量の調整が重要になります。ここでは、特に後者の観点から「食欲」について記載していきます。
食欲には、体内で不足している栄養度・エネルギーを感知し、それを補うための機構(「恒常性維持に関わる摂食」)と「美味しさ」という報酬を得るために食べるという側面(「嗜好性に基づく摂食」)があります。
何か行動(摂食)をした結果、予想していたよりも「良かった(美味しかった)」と感じる際、脳内の「報酬系」という機構が働きます。これが嗜好性に基づく摂食のメカニズムです。この「良かった」という感覚=快感によりドーパミンが放出されますが、快楽刺激を受け続けると、ドーパミン受容体が減少し、満足感が得られにくくなる状況が生じます。同程度の快感を受け続けるために、さらに摂食してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
一方、「美味しさ」という報酬追求型の食欲のみでは、エネルギーバランスが崩れ、生命維持の危険性が高まってしまいます。それゆえ体には、エネルギー不足を感知し、生命を守る仕組み「恒常性維持に関わる摂食」機能が備わっています。当該機能においては、摂食中枢が重要な役割を果たしており、代表的な因子としては血糖(グルコース)と脂肪酸があります。空腹時の血糖値低下・脂肪酸濃度増加という状況は、神経細胞を活性化し、摂食行動のスイッチが入ります。
反対に、満腹中枢は、グルコースによって活性化し、脂肪酸によって抑制されるニューロンです。つまり、食事によって活性化し、摂食行動を止める働きをします。ただし、血糖値の上昇には少なくとも食事開始から20~30分かかるので、満腹感が生じる前に食べ過ぎてしまうことを防ぐために、早食いは避けるべきと言えます。
3.エネルギー有効性
これまで述べてきたエネルギーバランスの他に、知っておきたい考え方に、エネルギー有効性というものがあります。
エネルギー有効性は、1日のエネルギー摂取量から運動に伴うエネルギー消費量を差し引いたものを除脂肪量で除した数値として求められます(単位:kcal/kg)。
エネルギー有効性=(エネルギー摂取量―運動消費エネルギー)/除脂肪体重
エネルギー有効性が低い状態というのは、体温維持や成長、生殖機能等に使用されるエネルギー量が減少している状態と言えます。体重・体脂肪量の減少を求めるあまり、極端な食事制限が続くと、特に女性においては「低エネルギー有効性」「無月経」「骨粗鬆症」等の症状を引き起こすとされています。
今回は、ボディメイクとエネルギーの関係について書いてきました。次回は、タンパク質・炭水化物・脂質といった栄養素について書いていきたいと思います。