パーソナルトレーナー必須知識 ケトジェニック編
パーソナルトレーニングを受けられるお客様の中には、差し迫った期日までになんとか体重を落としたいという方が多くいらっしゃいます。
そんな時、お伝えする食事内容プランとしてケトジェニックダイエットがあります。
目次
1.ケトジェニックダイエットとは
人間の身体は糖質と脂質をエネルギー源としていますが、1日のエネルギー摂取量の糖質に占める割合を10%程度に留め、脂質の摂取割合を増やすことで、主要なエネルギー源を脂質にする食事方法です。
主要なエネルギー源を脂質にすることで、ケトン体と呼ばれる物質が主に肝臓で多量に生成されます。ケトン体の基になっている脂肪酸をエネルギー源として利用する場合には、ATP再合成に時間を要しますが、ケトン体の場合は、エネルギー効率が向上することが分かっています。
一方で、脂肪の摂取量増加に伴い、血中の中性脂肪やコレステロール濃度が上昇することに伴う動脈硬化の進展リスクも報告されているため、実施にあたっては、健康チェックも事前にしっかり行っていきましょう。
2.ケトジェニックダイエットのPFCバランス
PFCバランスは、カロリー換算で30% : 60% : 10%が目安になります。糖質の摂取量は50g以内にするのがお薦めです。この水準ですと、ご飯・パン・パスタ・うどん等の主食は完全にカットする必要があります。
特に初週は早めにケトーシス(ケトン体を体の主要エネルギー源としている状態)に切り替えを行うために、糖質を限りなくゼロに近づけるという意識を持つことが重要です。
逆に、脂質が不足するとエネルギー不足で筋肉が分解される可能性が高まります。良質な油(オメガ3脂肪酸、中鎖脂肪酸、オメガ9脂肪酸等)を積極的に摂ることが必要です。
3.PFC設定方法
まず、1日の想定消費カロリーを計算するところから始めます。ベースとなるのは体組成計で計測される基礎代謝量です。
想定消費カロリー=基礎代謝量×活動強度(※1)
(※1)活動強度
低い:1.3 イメージ:デスクワーク中心。運動習慣なし。
やや低い:1.5
適度:1.7
高い:1.9 イメージ:終日肉体労働に従事
想定消費カロリーが出ましたら、ダイエットの目標ペースによって500kcal~1000kcalの数値を引きます。
【目標摂取カロリー】=【想定摂取カロリー】-【500kcal~1000kcal(※2)】
(※2)減少するのは体脂肪のみと仮定する(実際は、少なからず筋分解による減少も起こりえます)と、500kcal・1000kcalをアンダーカロリーとした場合の1ヵ月の減量想定ペースはそれぞれ下記の通りです。7200kcalというのは、1kgの脂肪を燃焼するために必要なカロリーです。1か月を4週間と仮定しています。
△500kcal÷7200kcal×7日間(1週間)×4(週間)=1.96kg/月
△1000kcal÷7200kcal×7日間(1週間)×4(週間)=3.88kg/月
なお、制約条件として、目標摂取カロリーが基礎代謝+300kcalを下回らないように設定します。過度なカロリー制限は、健康を損なう危険性を高めますし、身体のエネルギー消費がエコモードになってしまい、減量失速する可能性が高まります。なので、運動等によって消費カロリーを増やしていくというアプローチが望ましいです。
目標摂取カロリーが決定したら、先程示した30% : 60% : 10%の割合でPFCそれぞれに振り分けを行います。糖質とたんぱく質は1g=4kcalなので、振り分けたカロリーを4で除すると摂取目標量(g)が算出されます。一方、脂質は1g=9kcalなので、9で除して摂取目標量(g)を算出します。
例)
目標摂取カロリーが2000kcalの場合
2000kcalを30%:60%:10%に振り分け
⇒P600kcal(30%) F1200kcal(60%) C200kcal(10%)
たんぱく質摂取量:600kcal÷4kcal/g=150g
脂質摂取量:1200kcal÷9kcal/g=133.3g
糖質摂取量:200kcal÷4kcal/g=50g
減量が進むにつれて、基礎代謝も変化していきますので、その際には改めて目標摂取カロリーを算定する必要があります。