パーソナルトレーナー必須知識 生理学編VOL.2

前回は、身体の中で行われる代謝のメカニズムと筋活動に密接に関わるATPについてまとめました。
今回は、ATP再合成のための3つの機構(ホスファゲン機構・解糖系機構・酸化機構)と運動との関係性とボディメイクに関わるホルモンについてご紹介していきます。
ボディメイクの目的に応じて、食事内容とも関連付けた運動強度の選択が可能になるので、ケトジェニックダイエット実施前におさえておきたい内容です。

目次

1.糖新生とは

糖新生とは、脂質やアミノ酸等、糖質以外の物質からグルコースを合成する代謝経路です。肝臓や腎臓で行われます。解糖系やクエン酸回路とほぼ逆の反応で、ピルビン酸や乳酸、クエン酸回路の中間体などからグルコースが生成されます。
よって、ほとんどの運動において重要なエネルギー源ではないタンパク質であっても、この糖新生という過程を経て、アミノ酸からグルコース・ピルビン酸等に変換されてATP算出に寄与することになります。
特にタンパク質が代謝される条件としては、長時間の飢餓90分を超える長期間の運動、が挙げられるので、筋肉を落とさずに減量を進めたい方にとっては、これらの条件を避けることが重要です。

2.3機構のエネルギー供給能力について

ホスファゲン、解糖、酸化エネルギー機構のエネルギー供給能力は、運動強度と運動時間に影響を受けます。
レジスタンストレーニングやサッカーフィールド内での全力疾走等、高強度・短時間の運動では、ホスファゲン機構が主要なATP供給源です。
一方、解糖系は、中程度から高強度で短時間~中程度時間の運動(例:トラック1周のランニング)、酸化機構低強度・長時間の運動(例:長距離のサイクリング)で主要なATP供給源となります。
上記のうち、酸化機構では算出されるATPの約70%が脂質から30%は炭水化物から供給されるといわれています。そのため、例えば、ケトジェニックダイエット中において脂肪燃焼を第一に考えるのであれば、トレーニングには低強度・長時間の運動内容を選択することが有用です。

3.ボディメイクにおいておさえておきたホルモンの役割

ホルモン。馴染みのある言葉ですが、定義は?と問われると「はて…?」となってしまう用語ではないでしょうか。ホルモンとは、内分泌腺で作られ、血液によって運ばれる分子です。わかったような、わからないような定義ですが、実際にホルモンの種類と働きを見ていった方が分かりやすいかもしれません。

インスリン・・・膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を低下させる作用があります。食事等により分泌が促進され、インスリンが骨格筋細胞膜にあるインスリン受容体と結合すると、その刺激により細胞質に存在していた糖輸送体(GLUT-4)が細胞膜上へと移動し、骨格筋細胞へ血糖を送り込むという仕組みです。

グルカゴン・・・膵臓から分泌され、主に血糖を上げる働きがあります。異化ホルモンであり、筋分解を誘発します。分泌を抑制するには小まめに食事をすることがポイントになります。

成長ホルモン・・・下垂体前葉から分泌され、タンパク質合成と脂肪分解を促進する働きを持ちます。血中乳酸濃度の上昇を感知して分泌が促進されるため、遅い解糖での運動に反応しやすいです。

テストステロン・・・成長ホルモンの放出を促進する働きがあります。血清テストステロン濃度を上げるには、大筋群トレーニングや80~95%1RM負荷、30~60秒休憩のトレーニングを組むと良いとされています。

エストロゲン・プロゲステロン・・・女性ホルモン。生理周期や年齢によって分泌量が変化します。エストロゲンには、自律神経の働きを安定させる作用・コラーゲン産生の促進作用等があります。プロゲステロンには、体温を上げる働きや食欲増進作用があります。ボディメイクの観点からは、生理開始1週間前から体組成計が体脂肪率の増加を示しやすくなりますが、これは一時的な反応であることを理解することが重要です。

コルチゾール・・・副腎皮質から分泌されるホルモンの一つです。肝臓での糖新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解等が主な役割です。ストレスを受けたときに、分泌が増えることから「ストレスホルモン」とも呼ばれています。過剰なストレスを受け続けると、うつ病、不眠症などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患の一因となるといわれています。

甲状腺ホルモン・・・甲状腺から分泌され、細胞の代謝率上昇させる働きをもつ、アミノ酸誘導体のホルモンを指します。

生理学について、いくつかの文献を読んでみると、掘り下げている論点や、言い回しに違いがみられました。人体にはまだまだ未知の領域があるのだと感じさせられます。今回まとめたことも「~といわれているらしい」というスタンスで、更なる実験や研究によって覆る可能性もあると考えた方が良いのかもしれません。今後も学びを継続させていきたいと思います。