パーソナルトレーナー必須知識 栄養学編VOL.2

パーソナルトレーナーが身体と食物との関係性を理解し、栄養指導を行うためには、食物を構成する炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、水という6つの栄養素への理解が不可欠です。今回は、特に重要なものとして三大栄養素と呼ばれる「糖質」「たんぱく質」「脂質」について書いていきたいと思います。

目次

1.「糖類」「糖質」「炭水化物」の違いについて

いずれも馴染みがある言葉かと思いますが、日常生活においてこれらの違いを意識することは少ないのではないでしょうか。

「糖類」・・・単糖類もしくは二糖類といわれる分子量の小さい糖
例)ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)やショ糖(スクロース、一般に砂糖といわれるものでブドウ糖と果糖が結合したもの)
「糖質」・・・糖類が連結し大きな分子となったもの。多糖類、糖アルコールと呼ばれるものも含まれる
例)マルトデキストリン、デンプン
「炭水化物」・・・糖質に食物繊維を加えたもの

2.たんぱく質

たんぱく質を構成する最小単位はアミノ酸です。アミノ酸がペプチド結合によって50個以上つながったものをたんぱく質といいます。一方、50個未満の場合はペプチドと呼ばれます。

たんぱく質の必要量についてですが、ある研究によると、トレーニングを行わない場合には、1日に体重1kg当たり0.86gのたんぱく質を摂取した場合とそれ以上(1.4gと2.4g)摂取した場合とでは、たんぱく質合成速度に大きな違いがみられなかったのに対して、筋力トレーニング実施者においては、0.86gの時よりも1.4g摂取した場合の方が、合成速度が高まったという結果が出ています。この研究では、測定誤差や個人差などを考慮し、1.76g/kgのたんぱく質摂取を推奨摂取量としています。
筋トレをする場合は、たんぱく質を体重の1.5~2倍摂るようにしましょう、と聞くのはこういったところに根拠があるようです。
逆に、体重1kg当たり2.0g以上のたんぱく質を摂取すると、腎機能障害や尿路結石、骨代謝異常のリスクが高まるというデータも出ており、過剰摂取には注意すべきです。

・良質なたんぱく質とは
体内のたんぱく質は、9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸により構成されています。必須アミノ酸は体内で合成することができないため、食事から摂取することが「必須」となります。
この必須アミノ酸含有量が世界保健機関等の定めている基準を満たしたものアミノ酸スコア「100」と評価され、良質なたんぱく質であるといわれています。

・たんぱく質摂取の効果を高める方法
たんぱく質・アミノ酸摂取の際に、糖質も同時に摂取することで効果が高められるといわれています。糖質を摂取することで膵臓から分泌されるインスリンは、筋血流量を増加させ、骨格筋へのアミノ酸供給を促進する作用を持っているためです。

3.脂質

調理用油の多くは、グリセロール分子に脂肪酸が3個結合した「トリアシルグリセロール(トリグリセリド)もしくは「(中性)脂肪」と呼ばれるものです。
トリアシルグリセロールが常温で液体のものを「油」、常温で個体のものを「脂」と表記することが多いです。また、脂肪酸はそこに含まれる「炭素数」と「不飽和結合の有無・数」によって下記のように分類が行われます。

・炭素数による違い
炭素数(4-6個):短鎖脂肪酸(例:バター)
炭素数(8-10個):中鎖脂肪酸(例:MCT)
炭素数(12個以上):長鎖脂肪酸(例:肉の油)

・不飽和結合の有無による違い
炭素同士が二重結合することなく、結合の手がすべて水素と結合している(=水素によって飽和されている)ものが飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸は結晶構造を取りやすくなるため、常温でも固定化するという性質があります。
逆に炭素の二重結合が存在している(=水素によって飽和されていない)脂肪酸が不飽和脂肪酸です。
不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類されます。
多価不飽和脂肪酸は、構造の違いからさらにn-3系(アマニ油・えごま油等)とn-6系(サラダ油・菜種油等)に分類されます。多価不飽和脂肪酸は動脈硬化や血栓の予防、血圧を下げる働きが期待され、LDLコレステロール(増えすぎると動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞を発症させる、悪玉コレステロール)の低下に役立つといわれています。ただし、n-6系は調理用油として広く用いられており過剰摂取リスクも大きい油です。過剰摂取は、血液粘度が増して動脈硬化などの原因になるため、留意が必要です。
一価不飽和脂肪酸のなかで特に知られているのは、オレイン酸(オリーブオイル等)で、血液中の悪玉コレステロールを下げる働きがあるとされています。

食事制限を考えるうえで、一般的には脂質を抑えようという考えが生じてしまいがちですが、生体膜やホルモン、消化吸収に関与する胆汁酸の材料になる等、生体にとって欠かせない成分の一つです。上記のように身体によい影響を与える油もあるので、うまく付き合っていきたいものです。