トレーニングを最大化!~パーソナルトレーナーが教える生理学『VOL.1』~

皆さんこんにちは!tomo__fitnessことマツオトモキです。

今回からは2回にわたり「トレーニングに役立つ生理学」という観点でお話していきます!

その前に、生理学とはいったいどのような学問かを確認しましょう。
生理学を簡単に説明すると、【どのような仕組みで人間の体が機能しているかを科学的根拠に基づいて解明する学問】と言えます。

身体が機能するということは、筋肉や呼吸器系や循環器系、エネルギーの代謝や内分泌物質の働きなど様々な要因が積み重なって営まれるものです。

つまりトレーニングという身体活動をより効率化させるためには、生理学を学ぶことが大きな力となるといえるでしょう!

このような観点から、パーソナルトレーナーのようなダイエットやボディメイクを指導する存在にとって、効果的な運動プログラムの立案やアドバイスを行う行為において必要不可欠な学問といえます!(もちろん指導者以外の方も知ることで、より効率的にトレーニングを行えますので必見です!)

この知識をしっかりと有したトレーナーは、お客様のボディメイクの成功確率を高いものとしますので、必ず学んでいくべきだと私は考えております。

そこで今回はボディメイクやダイエットといった「トレーニングに役立つ生理学」という観点でお話をしようと考えましたので、ぜひお付き合いいただけると幸いです!

1. 人間のガソリン「エネルギーの仕組み」

画像1を拡大表示


まずは人間が動くために必要となるエネルギーの作られ方について見ていきます。

人間は食事などから様々な栄養素を身体に取り込みます。
その中でも、主に三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)は生体内で利用可能なエネルギー形態に変換されることで活動エネルギーとなって、人間を動かすガソリンとなるのです。
これが皆さんも聴いたことのある「代謝」というものです。

「代謝」には2種類の作用があります。

❶異化作用(カタボリック)
→大きな分子を小さな分子に分解すること。これによってエネルギーが放出される。

❷同化作用(アナボリック)
→小さな分子を大きな分子に合成すること。

このように分かれていますが、最初にお話ししたエネルギーに変換するという過程は❶の異化作用であることがわかりますね!

また、異化作用によって三大栄養素から作り出されたエネルギー体をATP(アデノシン三リン酸)と言います。
ではこのATP(アデノシン三リン酸)とはいったい何者なのでしょうか?

2.ATPとは?

画像2を拡大表示


ATPとは、前述したようにアデノシン三リン酸の略です。
A(アデノシン)という物質にP(リン酸基)という物質が3つ(Tri=ラテン語で3)結合していることからこのような名称になっているのです。

ATPは、Pを1つ切り離すことでエネルギーを放出する仕組みを持っています!
(ちなみにATPは使用されるとADP(アデノシン二リン酸、Duo=ラテン語で2)に変換されます。)

画像4を拡大表示

ATPは主に筋肉(横紋筋、平滑筋、心筋)で使われますが、筋細胞に貯蔵できるATPの量にも限度があります。
この観点から、短時間で大きな力を使うような運動(全力ダッシュや高重量を扱う動作etc.)を行うと疲れるのは、貯蔵されたATPを使い果たしてしまうからと理解できますね!

つまり継続的に筋活動を行うためにはATPの供給(再合成)が必要になるのです。

ATPの再合成の方法には以下の3つがあります。

① ホスファゲン機構:ATPとクレアチンリン酸を使う。
② 解糖系機構   :炭水化物(糖質)を使う。
③ 酸化機構    :炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質を使う。

ここで重要になってくるのは、使用される基質・エネルギー機構は【運動強度】によって決まるという点です。そしてそれに付随する形で運動の【継続時間】が関与してきます。

この2つの要素は必ず①運動強度→②継続時間の順で関与しますので、間違えないようにしましょう!

ではここからはこれらの3つのエネルギー機構の特徴について1つずつ見ていきましょう!

3.再合成の仕組み①【ホスファゲン機構】

画像7を拡大表示


運動をするときはエネルギー源であるATPからエネルギーの供給をすることはここまでの話で理解していただけたと思います。

そしてそのATPを再合成して継続的に筋活動を行っているわけですが、まず1番最初に使われる再合成の機構に【ホスファゲン機構】というものがあり、以下のような特徴を持っています。

・運動の開始時に使われる
・短時間、高強度の運動時に使われる。
・再合成の産生速度が1番早い。
・産生する量は少ない→この機構を使った運動時間は短くなる。

以上のような特徴がありますが、ここで重要になってくる物質にCP(クレアチンリン酸)というものがあります。

画像3を拡大表示

上の図はホスファゲン機構におけるATPの再合成の流れを表しております。

左側にあるCP(クレアチンリン酸)は肝臓に存在して血液によって筋肉に運ばれます。
激しい運動などでATPが使用されてADPに変換されたとき、体内でクレアチンキナーゼという酵素によってC(クレアチン)とP(リン酸)に分解されます。
するとATPを再合成するために、ADPに対してP(リン酸)が結合し、再合成を果たすのです。この動きが繰り返されることでATPの供給がなされています。

これがホスファゲン機構におけるATPの再合成の仕組みです!

では、具体的にどのような運動強度と継続時間が該当するのか。以下にまとめました!

・運動強度:非常にきつい
・継続時間:0~6秒

運動強度の非常にきついというのは、短距離走やウエイトリフティングなど瞬時に爆発的な力を発揮するような強度を示しています。
運動の効果としては「筋力の向上」「筋肥大」などが期待できますので、そこを目的とされている方はこのホスファゲン機構の範囲内に強度と時間設定をしていくのが効果的になります。

継続時間の面で0~6秒という短い時間しか再合成が働かない理由としては、体内のクレアチンリン酸にも貯蔵量がある程度決まっているという点で、長時間の供給をすることは不可能になってくるからです。

そこで次に使われるのが【解糖系機構】になってくるので、続いてそちらも見ていきましょう!

4.再合成の仕組み②【解糖系機構】

画像8を拡大表示


ホスファゲン機構の次に使用される機構がこの【解糖系機構】です。
解糖とは、筋に蓄えられたグリコーゲン、または血中のグルコースといった炭水化物(糖質)由来の分子をピルビン酸という物質に分解することを表しています。
その後ピルビン酸まで分解された糖質は状況によって2つのルートに分かれてATPの生産を行います。そのルートは以下の通りです!

❶細胞内の酸素が十分でない場合→「速い解糖」
❷細胞内の酸素が十分な場合  →「遅い解糖」

ではそれぞれ詳しく見ていきます。

画像5を拡大表示

❶「速い解糖」
速い解糖はホスファゲン機構には劣るものの、かなりきつい運動強度が行われる際に使われます。ここでは解糖によって生成されたピルビン酸が乳酸という形に変換されます。
この過程ATPが作られていくのです。

❷「遅い解糖」
遅い解糖では速い解糖より少し運動強度が落ちるため、ある程度の酸素が細胞内に供給されます。そのためピルビン酸をミトコンドリアへ輸送することができますので、「酸化機構」でのATP再合成が行われるといえます。(詳しくは「酸化機構で」お話しします!)

ちなみに「乳酸」と聞くと疲労物質だと思われる方も多いと思いますが、ATPの再合成や血管新生、傷の修復など様々な面で乳酸は使われていますので、決して単なる不要物質ではないのです。そして疲労の一因は細胞内の㏗が低下することとも最近は言われていますので、乳酸が疲労物質とは断定できないのです。

ボディメイクにおいては、乳酸をためることで脳から成長ホルモンの分泌が促進されます。
成長ホルモンは体脂肪の分解を促進する効果を持っていますので、ダイエット中の方などには非常に有効な物質ともいえます。

ですので、乳酸をためることが目的に応じては重要といえるのです!ちなみに乳酸をためるには「速い解糖」の範囲内に入れてあげることが重要となります!
では具体的な運動強度と継続時間について見ていきます。

❶速い解糖
運動強度:かなりきつい・きつい
継続時間:6~120秒

❷遅い解糖
運動強度:普通
継続時間:2~3分

このように段階的に解糖系も使われていくのがわかります。
では3分以上になるとどうなるのか。もう予想がつくと思いますが、ここからは【酸化機構】が使われていくのでそちらを見ていきましょう!

5.再合成の仕組み③【酸化機構】

画像9を拡大表示


ホスファゲン機構、解糖系機構と使われてきて、最後に使われるのが【酸化機構】です。

酸化機構は安静時や低強度の運動、有酸素運動中などにATPの供給を図る役割を持っています。

ホスファゲン機構ではCP(クレアチンリン酸)、解糖系機構では炭水化物(糖質)がエネルギー源として使われてきましたが、酸化機構のエネルギー源は、主に炭水化物、脂質、タンパク質がこの順番で使われていきます。

安静時という観点から見ていくと、産生されるATPの割合は約70%が脂質約30%が炭水化物(糖質)から供給されています。


タンパク質は代謝されないのかという疑問が浮かぶとは思いますが、タンパク質の代謝は基本的に安静時には働きません。しかし長時間の飢餓状態が続いたり、90分を超えるような長時間の運動が行われたりする場合は代謝されます。

上記より安静時は脂質の代謝が高いわけですから、基礎代謝が高いほど脂質の減少が期待できるといえます。
ちなみに基礎代謝を高める方法としては、代謝に関わる臓器や筋肉の働きを高める必要があります。臓器を大きくするということは不可能なので、筋力トレーニングを行うことが基礎代謝を高める唯一の手段ともいえるため、運動が推奨されているのです!

少し話がそれましたが、基本的には運動強度が高まれば炭水化物からのATP供給が増えるわけですが、炭水化物の貯蔵量が尽きれば脂質、タンパク質の順で利用されていくことが重要になるので押さえておきましょう!

さて、前項で遅い解糖に関しては酸化機構でお話しすると記載しましたので、ここからは遅い解糖の話をします。

画像6を拡大表示

「遅い解糖」は炭水化物がピルビン酸に分解されたのち、ミトコンドリアへ輸送され、アセチルCoA(アセチルコエンザイムA)という物質に変換されます。

このアセチルCoAは脂質やタンパク質の代謝からも作られますが、この物質はTCA回路(クエン酸回路)というものに入り、ATPを作り出します!

こちらは有酸素運動などで使われることから、「筋持久力の向上」などに効果的と言えます。

6.まとめ

画像10を拡大表示


ここまでいかがだったでしょうか?
ATPの再合成には【ホスファゲン機構】【解糖系機構】【酸化機構】の3つが存在して、それぞれが運動強度継続時間に起因していることが分かったと思います!

ボディメイクの目的などに応じて、どのような強度でどれくらいの時間実施すればそれぞれの機構を使い分けられるかが、トレーニングを最大化するための近道と言えます!

是非この内容を参考にトレーニングの内容を考えてみましょう!

ここまでお話しした内容は、パーソナルトレーナーにとって必要な生理学の予備知識です。
系統的に学ぶために、専門のスクールで学ぶことは大切だと思いました。

次回は生理学VOL.2です。
糖新生運動強度、そして知っておくべきホルモンについてまとめます。

そちらもトレーニングの最大化のアプローチに関して、非常に重要な内容になりますので是非お楽しみに!

最後までご覧頂き誠にありがとうございます。

TREINER’S GYM(トレーナーズジム)駒沢店でパーソナルトレーナーとして活動しております!
instagramでも食事やトレーニング、ダイエットについて発信していますので、是非ご覧いただけると幸いです。

パーソナルトレーナー 松尾

松尾朋紀

コラムを書いた人
松尾朋紀

トレーナーズラボ第9期生の松尾朋紀です。

instagram