コラムを書いた人
助政桂多
トレーナーズラボ第7期生の助政桂多です。
こんにちは。パーソナルトレーナーの助政桂多です。
前回の生理学の続きVOL.2、新糖生と運動強度、そして知っておくべきホルモンについてお話し致します。
パーソナルトレーナーが生理学を熟知していなくてもいいのではないか?と思う方もいるかもしれません。
しかし、自分がボディメイクをしたり、お客様がダイエットをする時には、生理学はとても大事なものになってきます。
実際、私はすでに60日間の※ケトジェニックダイエット(糖質コントロール)を終え、体重-2.5Kg、体脂肪率−1.8%、体脂肪量-1.3Kg、の減量をストレスなく成功させることが出来ました。この生理学を勉強したことがとても役に立っています。
※ケトジェニックダイエット(ケトン体)のお話は後日投稿予定です。
例えば、前回紹介した代謝やATPの作られ方、エネルギー機構の種類と使われ方を知っておくことで、ケトジェニックを始めて、最初の1週間程で1〜2㎏体重が減る理由がわかります。
そのあたりの詳しいお話も後日させていただきますね。
よって、パーソナルトレーナーは生理学を熟知している必要があるのです。
そこで、今回は、生理学の知識であるホルモンなどについてご紹介していきたいと思います。
糖新生とは飢餓状態において主に肝臓や腎臓で糖以外の物質【トリグリセリド(中性脂肪)、乳酸、アミノ酸(筋肉)】からグルコースを生成する経路のこと。※下記図参照
つまり、糖以外の物質からグルコースを生み出して、エネルギーを補充するということです。
糖新生は、長期の飢餓や90分以上の運動において、特に注意しなければなりません。なぜならば、タンパク質の分解が始まってしまうからです。
すなわち、筋肉が減ることを意味します。
これは最も避けなくてはいけないですよね。
前回の復習で酸化系機構では、上記のTCA回路を通ってATPが作られます。その際、材料になっているのは、糖質、脂質、たんぱく質です。ケトジェニックダイエットなどに糖質を制限するダイエットなどを行うと、脂質、たんぱく質からATPを作るようになります。よって、ここで糖新生がでてくるのです。
ざっくりとまとめますと
・酸化機構は、安静時と有酸素性運動時にATPを供給する機構
・主に、炭水化物と脂質が利用される
・タンパク質は、長期の飢餓と90分以上の運動で利用される
・安静時には、約70%が脂質、30%が炭水化物からATPが供給される
・運動強度が上がるにつれ、炭水化物からの供給割合が多くなり、足りなくなれば、脂質やタンパク質が利用される
筋肉の分解を最小限にするためには、食事のPFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物のバランス)に気を配りながら、運動強度と運動時間の管理も必要となってきます。
ATPを再合成するガソリンホースである、ホスファゲン機構(ATPとクレアチンリン酸を使用)、解糖系機構【炭水化物(糖質)使用】、酸化機構【炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質を使用】のどのエネルギー供給機構が使われるかは、第1に運動強度、第2に運動の継続時間によって決まることは、前回の記事でも少しお伝えしました。
※クレアチンリン酸系=ホスファゲン機構
上記の表の通り
・ホスファゲン機構は、高強度で短時間の運動
・解糖系機構(早い解糖)は、中~高強度で短時間~中程度の時間の運動
・酸化機構は、低強度で長時間の運動においてATPを供給しています。
エネルギー供給機構の時間枠を把握しておくことで、目的に沿ったトレーニングプログラムを立てることが可能になります。
ホルモンとは、内分泌腺という特殊な細胞で作られ血中に放出される、化学伝達物質のことです。体の健康維持のためいろいろな機能を調節する働きがあります。一種の潤滑油といってもいいですね。
ではホルモンはどこでつくられるのか?答えは全身いたるところでつくられています。内分泌腺という特殊な細胞でホルモンがつくられ、全身いたるところでホルモンはつくられると言いましたが、主な内分泌臓器を参考までにあげておきます。
内分泌腺には、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎皮質、副腎髄質、膵内分泌(胃腸・心臓血管・脂肪・神経系など)、睾丸、卵巣などがあり、それぞれ異なる働きをするホルモンが作られています。
そして多くのホルモンが、細胞の成長や分解に影響を与えます。
テストステロン、成長ホルモン、インスリンのような同化ホルモンは、細胞の成長過程を促進する傾向にあります。
コルチゾールのような異化ホルモンは、細胞を分解する作用があります。
そして、これらは実施したエクササイズの影響を受けます。
下記で代表的なものをご紹介していきたいと思います。
インスリンとは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、糖の代謝を調節し、※血糖値を下げて一定に保つ働きを持ちます。
※血糖値を下げる唯一のホルモン
また、インスリンは同化ホルモンであり、男性ホルモンやテストステロンなどのホルモンよりも、筋の合成に最も強く働くとされています。
ですので筋トレ後にバルクアップをしたい人は、しっかりと食事(調整された糖質の摂取)をすることが重要です。もちろん休養(睡眠)も大切です。
糖質を摂りすぎて肝臓や骨格筋で貯蔵できず余ったブドウ糖は、中性脂肪に合成されますが、その合成を促進する働きもインスリンが担っています。
よって、糖質を大量に同時摂取すると体脂肪が増えやすくなるので注意が必要です。
グルカゴンは、インスリンとは逆の働きで、血糖値を上げる働きがあります。主に膵臓のランゲルハンス島のα細胞から分泌されます。
グルカゴンは異化ホルモンであり、糖新生(筋の分解)を起こしやすくします。
グリコーゲンをアミノ酸から発生させる作用があるため、簡単に言うと筋肉を減らして、空腹から守ってるというイメージです。
このようにして、グルカゴンは血糖が体から無くならないように体を守っています。ダイエットやボディメイクをしている時は、低血糖になりやすくなるため、体が血糖をコントロールするため糖新生を誘発しやすくなります。
そうすると、筋の分解が起こりやすい状態になります。
ボディメイクでは筋の分解は最小限に抑えたいので、小まめに食事をすると良いです。
成長ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。
成長ホルモンや副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモンなど、さまざまなホルモンを分泌している器官で、「ホルモンの指令塔」ともいわれています。なんだかかっこいいですね。
また、成長ホルモンの役割は年齢ごとに異なります。
成長期は、人間の骨・軟骨・主要臓器の形成、成長に必要なホルモンの1つです。
成人の成長ホルモンの働きは脂肪燃焼効果の働きがメインです。
乳酸の発生する運動をすることで成長ホルモンの分泌がより促されます。
ダイエット時はこの成長ホルモンを分泌させる運動をメインに行うと脂肪燃焼が促進されます。つまり解糖系機構(早い解糖)での運動が効果的です。
また、22時~翌2時の時間帯でより多く分泌されるため、早めの就寝が体脂肪減少や疲労回復のカギになります。
その他の働きも下記のように沢山ありますので御覧ください。
・タンパク質の合成を促進する
・脂肪の分解を促進する
・コラーゲンの合成を促進する
・軟骨の成長を促進する
・免疫細胞機能を促進する
エストロゲン・プロゲステロンは、脳下垂体から分泌されるホルモンが卵巣を刺激して分泌されます。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
妊娠に備える働きをするホルモンで、通称で美肌ホルモンともいわれています。
肌に潤いやハリを与えたり、髪の成長を促したりしてくれます。
他にも、代謝を促す、血管や骨を強くする、自律神経を整える、頭脳の働きを良くするなどの役割も果たしているため、エストロゲンの分泌が活発になる月経開始から排卵日までの期間は、女性は体調が安定しやすくなります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)
妊娠を維持するために働くホルモンなので、排卵日から月経がはじまるまでの間に増加し、子宮内膜を厚くし、体温を高くして妊娠に備える指令を出しています。
女性の排卵日以降の体温が上昇するのはこのホルモンの働きです。
妊娠した場合に備えて、女性をあまり活発にさせないように作用するという説もあります。
ちなみに、妊娠してからは分泌量がグンとアップし、妊娠状態を維持したり、乳腺を増やしたりする役割も果たします。
女性ホルモンはわずかな期間でホルモン分泌が変化するので体調の変化が起こりやすい(プロゲステロンが急激に変動する排卵後から次の生理までは、不調を感じやすい)と言われています。
また、女性ホルモンの分泌のリズムが乱れると、生理不順も起こりやすくなってしまいます。
生理不順の影響として疲労やストレスによるものが多いと言われていますので過度なダイエット等、あまりストレスを溜め込まないようにすることも大切になります。
分泌サイクルをまとめますと
①月経期 エストロゲン・プロゲステロン共に一定
②卵胞期 エストロゲンの分泌量が増加
③排卵期 プロゲステロンの分泌量が増加
④黄体期 エストロゲンの分泌量が低下
エストロゲンには、脂肪燃焼を促進する働きがあるため、減量が期待できるのは、②の卵胞期(生理終了~排卵前)になります。
一方、④の黄体期(排卵後~次の生理)は、むくみにより一時的に体重計の数値が高くなることがあります。
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一つです。心身がストレスを受けると、急激に分泌が増えることから、別名ストレスホルモンとも呼ばれています。
主な働きは、肝臓でアミノ酸を分解し糖をつくる(糖新生)、タンパク質の分解促進、タンパク質の合成抑制、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などで、生体にとって必須のホルモンです。
とはいえ筋肉にとっては良くない作用が多いホルモンです。
ボディメイクやダイエットしている時はできるだけストレスを溜めずにコルチゾールをできるだけ分泌しないようにする工夫が必要です。
例えば自分の好きなことをしたり一人になる時間を作ってゆっくり休むなど、しっかりリフレッシュ時間を設けていきましょう。
また、就寝中はコルチゾールの分泌が増えるため、朝食をきちんと食べてインスリンを分泌させて上げると良いですね。
甲状腺ホルモンは、甲状腺から分泌されるホルモンです。
主な働きは、全身の細胞に作用し、細胞の代謝率を上昇させます。
その他の作用としては、熱産生を増加させる、血糖値の上昇、血中のコレステロール値低下、骨格筋でのタンパク質異化促進、心機能亢進(心拍数増加、心収縮力増加)、身体の発育などがあります。
分泌が高すぎると
・疲れやすくなる
・下痢をしやすくなる
・汗をよくかくようになる
・イライラする
分泌が少なすぎると
・疲れやすくなる
・便秘がちになる
・冷え性になる
・食欲の低下
・あまり食べてないのに体重増加
このように甲状腺ホルモンは一定の分泌量でないとネガティブな影響が起きてしまうということがあります。
第2回に分けて生理学について詳しくお話してきましたが、やはりパーソナルトレーナーとして活躍していくには、必要不可欠な知識であると改めて認識できました。
しっかりとした科学的根拠であるエビデンスに基づいた、こうした生理学の知識を身に付けることで、ケトジェニックダイエットや、脂質制限ダイエットなどを、お客様に対して説得力と自信をもって提供することができます。
なぜトレーニングしても痩せないのか、なぜ糖質制限や脂質制限をしても痩せないのか、こうして学んだ生理学を理解していれば、慌てることなくお伝えすることができます。
まだまだこれから学ぶことはたくさんありますし、一人前のプロのトレーナーになるためにも、さらなる努力と勉強の継続をして、より一層知識を深めていきます。
自己満足で終わることなく、何より1番にお客様の役に立てるように、生活で使える確かな知識を、どんどん惜しみなく伝えていこうと思います。
本日は以上です。
次回は栄養学についてお話していきます。
5大栄養素とは、糖類とは、脂質についてをお送り致します。
今回も最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
Instagramも頑張っていますので、ぜひ御覧ください。
TRAINER’S GYM(トレーナーズジム) 曙橋店で
オーナー兼トレーナーをしています。ホームページはこちら。
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