パーソナルトレーナーに必要な『生理学』の知識【VOL.1】

こんにちは。
トレーナーの三瓶です。

今回のテーマは「生理学」です。

まず生理学とは何かを知っておきましょう。
生理学(Physiology)とは…
「人体を構成する各要素(組織、器官、細胞など)がどのような活動を行っているかを解き明かす学問」です。

身体の各要素がどのような機能を持つかという基本を抑えたうえで、その機序への理解を深めていくことでトレーニングも効率化できます。

知識を身に着けることでお客様のボディメイクやダイエットにも適切なアプローチが可能となりますので、
パーソナルトレーナーは必ず知っておく必要があります。

それでは参りましょう!

異化と同化

画像4を拡大表示

異化作用とは…
大きな分子から小さな分子への分解の過程でエネルギーが放出される過程
(例:炭水化物がグリコーゲンに分解)

同化作用とは…
小さい分子から大きい分子を合成する過程で異化作用で放出されたエネルギーを使用
(例:アミノ酸からタンパク質の合成)

人間の身体は同化作用と異化作用のバランスによって一定に保たれている。
→これを代謝と呼ぶ
(体内でのすべての同化・異化作用が含まれる)

異化作用で得られたエネルギーは中間分子である
アデノシン三リン酸(ATP)
を介して同化作用で使われます。

十分なATPの供給なしには、筋活動と筋の成長はあり得ません!
そのため、パーソナルトレーナーは運動がどのようにしてATPの利用と再合成に影響を及ぼすかについて基本的に理解しておく必要があるのです。

ATP(アデノシン三リン酸)とは

59198302-atp-の化学式を描画ペンを持つ手を拡大表示

ATPとは前述したとおり、
異化作用によって三大栄養素から作り出されたエネルギー体のこと。

ATPは体内の様々な反応のためのエネルギーとなります。
しかし筋細胞には限られた量のATPしか蓄えられないため、筋活動を継続的に行うためには
常にATPの供給(再合成)が必要となります。

このATPを産生する過程は筋細胞内で起こります。

3つのエネルギー供給機構

再生可能エネルギーとは何かを簡単に解説!日本と世界の導入状況もを拡大表示

人間にはATPを再合成するために3つのエネルギー供給機構が存在します。

①ホスファゲン機構
(無酸素性機構、酸素を必要としない→ATPとクレアチンリン酸を使用)
②解糖系機構
(速い解糖と遅い解糖がありどちらも無酸素性機構→炭水化物<糖>を使用)
③酸化機構
(有酸素性機構→炭水化物<糖>、脂質、タンパク質を使用)

上記の通り、炭水化物だけが酸素なしで直接的にエネルギー産生のために代謝されます。

使用されるエネルギー機構の決定は
【運動強度】→【継続時間】
の順に決まります。

1.ホスファゲン機構

短時間・高強度の身体活動のためのATPの主要な供給源ですが、
強度に関わらずすべての運動の開始時に動員される機構でもあります。

再合成に重要な働きを持つ物質がCP(クレアチンリン酸)です。

順序は…
①ATPがエネルギーとして使われた後、ADP(アデノシン二リン酸)に変化
②ADP+CP(ADPとPがくっつく)
③ATP+クレアチン(P)

画像1を拡大表示

前述した短時間・高強度の身体活動とは…

運動強度:非常にきつい(ジャンプやスプリント、ウエイトリフティング)
継続時間:0~6秒

2.解糖系機構

解糖系は、筋に蓄えられたグリコーゲンあるいは血中に運ばれたグルコースといった炭水化物を分解し、ATPを産生します。

解糖系の過程には、速い解糖遅い解糖の2つが存在します。

速い解糖は無酸素的解糖と呼ばれ、遅い解糖はピルビン酸の最終的な利用方法から有酸素的解糖と呼ばれます。
しかし、解糖系はそれ自体は酸素を必要としないためこれらの名称はこの一連の過程を正確には表していません。

画像2を拡大表示

①速い解糖
最終酸性物質であるピルビン酸は乳酸へと変換され、遅い解糖より速くエネルギー(ATP)を供給します。
筋トレ(レジスタンストレーニング)のように速いエネルギー供給が要求される場合、速い解糖が主として働きます。

②遅い解糖
ピルビン酸はミトコンドリアに運ばれ、酸化機構の下でエネルギー源となります。
軽い強度(エアロビックダンスなど)の開始時などのようにエネルギー要求がそれほど高くなく、かつ細胞内の酸素量が十分である場合には、遅い解糖が使われます。

具体的な運動強度と継続時間は…

①速い解糖
運動強度:かなりきつい・きつい
継続時間:6~30秒・30秒~2分

②遅い解糖
運動強度:普通
継続時間:2~3分

3.酸化機構

酸化機構は安静時と有酸素運動中の主要なATP供給の源であり、
炭水化物→脂質→タンパク質 の順で利用されます。

長距離走やトレッドミル歩行、水中エアロビクス、ヨガなどを行っている場合は主に酸化機構からのエネルギー供給に依存しています。

タンパク質は通常は顕著に代謝されませんが、長期の飢餓90分を超えるような長時間の運動では代謝されます。

*安静時には、産生されるATPの約70%が脂質から、30%が炭水化物から供給されます。

運動の開始に伴い、運動強度が上がるにつれて多く使われる基質は脂質から炭水化物へと移行します。
高強度の有酸素性運動の間、十分に供給が追い付くのならば、ほとんど100%のエネルギーが炭水化物から供給されます。

運動強度:普通・軽い
継続時間:2~3分・3分以上

まとめ

画像6を拡大表示

・ATPの再合成には【ホスファゲン機構】【解糖系機構】【酸化機構】の3つが存在
・使用されるエネルギー機構の決定は【運動強度】【継続時間】

以上!!

今回の内容がパーソナルトレーナーにとって必要な生理学の予備知識です。
系統的に学ぶために、専門のスクールで学ぶことは大切だと思いました。

次回は・・・・・・
生理学VOL.2です。
糖新生と運動強度、そして知っておくべきホルモンについてまとめます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
次回の記事もよろしくお願い致します!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
疑問に思ったことや聞きたいこと、少しでも気になったことがあればコメント頂ければお答えします。
私のInstagramアカウント「peipeiman_」→こちらをクリック
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

三瓶巧

コラムを書いた人
三瓶巧

トレーナーズラボ第11期生の三瓶巧です。

instagram