「生理学」パーソナルトレーナーにとっての土台【VOL.2】

こんにちは。清水祥永と申します。今回は、前回に引き続き生理学についてです。具体的には「糖新生」と「ホルモン」について。これらの内容に触れつつ、ダイエットやボディメイクとの関連性についてもみていきたいと思います。

目次

糖新生

はじめに、「糖新生」とは何か。
「体脂肪」や「筋肉を分解して取り出したアミノ酸」から糖を生成し、運動等で下がってしまった血糖値を補填する働きのことをいいます。

糖新生と筋肉の分解

先述したように、糖新生が起こる過程では体脂肪や筋肉の分解が発生します。トレーニングやボディメイクをされている方にとって、「筋肉の分解」はできるだけ避けたいものです。避けるためにはどうすればよいのか。糖新生を防ぐことです。ではどうすれば糖新生を防げるのか。最も簡単な方法は、「血糖値を下げない」ことです。血糖値が下がることにより糖新生が起こるのであれば、下げなければいいだけです。トレーニング前にしっかりと食事を摂っておく。トレーニング中に糖質を摂り続ける。単純なことですが、効果としてはとても高いです。

糖新生とケトジェニックダイエット

ここで少し糖新生とケトジェニックダイエットの関係性について触れていきます。ケトジェニックダイエットについては後の記事において詳しく解説していきますので、ここでは糖新生との関係性を述べるために簡単にまとめていきます。
ケトジェニックダイエットは糖質を制限する食事法のため、血糖値が常に低い状態となります。では、ケトジェニックダイエット中の糖新生はどうやって防ぐのか。防げません。ただし、糖新生を最小限に抑えることは可能です。
ケトジェニックダイエット中は体内に「ケトン体」と呼ばれる糖の代替となるエネルギー源が生成され、身体活動を行うためのエネルギー供給源が血糖からケトン体へ移行します。この状態になると、血糖値が低くてもエネルギー不足に陥ることはなく、血糖値を上げる必要がなくなるため糖新生の活動を抑えることができるわけです。

ボディメイクとホルモンの関係性

【インスリン】
血糖値を下げる唯一のホルモン。
仕組みとしては、血液中の糖分を筋肉や脂肪などに運び込む。つまり、血液中の栄養を体内のいろんな場所へ運ぶ役割をもつホルモンということです。このインスリン、ボディメイクと深く関わってくるホルモンの一つで、トレーニングをすることにより血液中の栄養を優先的に筋肉へ運ぶようになります。「しっかりと食事を摂り、しっかりとトレーニングをする。」この当たり前なことをきちんと日々行うことが大切だということです。

【グルカゴン】
血糖値を上げるホルモン。
インスリンとは逆の働きをするホルモンで、不足した血液中の糖分を補填する。つまり糖新生を誘発させる役割をもちます。ボディメイクをする者にとって、糖新生はできるだけ避けたいことだと先述したように、このホルモンを活発化させないよう小まめな食事を摂ることがポイントです。

【成長ホルモン】
このホルモンには様々な役割があります。その中でも特にボディメイクと深い関わりを持つものとして、たんぱく質合成の促進(筋肥大・筋力増加)、脂肪分解の促進が挙げられます。
このホルモンの分泌を促進する方法としては、
・トレーニング強度を、各種目10RM×3セット(休憩1分)に設定
・22時~2時の時間帯は眠っていること
・テストステロンの分泌を促進させる

【テストステロン】
このホルモンは、成長ホルモンの分泌を促進させ、相乗的に働きながら、たんぱく質合成(筋肥大・筋力増加)を促します。
このホルモンの分泌を促進する方法としては、
・大筋群のトレーニングをコンパウンド法で実施
・トレーニング強度を、2~6RM(休憩30~60秒)に設定
・2年以上のレジスタンストレーニング
※女性は男性の20分の1しか分泌されないというデータがあります

【コルチゾール】
このホルモンは、別名「ストレスホルモン」とも呼ばれており、働きとしては、たんぱく質の分解および合成の抑制(筋肉量減少・筋力低下)、血糖値の上昇、脂肪分解などが挙げられ、インスリン、テストステロンと拮抗するホルモンです。
このホルモンが分泌される要因としては、
・朝一番に分泌される
・ストレス
・長時間の高強度トレーニング
筋肉量減少や筋力低下と聞くと、ボディメイクにおいてはマイナスなホルモンでしかないようにみえますが、脂肪を燃焼し減量をするという観点でみた場合、一概にマイナスなホルモンだとは言い難いように思います。

【エストロゲン・プロゲステロン】(女性ホルモン)
いわゆる女性ホルモンと呼ばれるもの。
エストロゲンには、代謝を上げ痩せやすくする、精神状態の安定化、肌の潤いやツヤを守るといった働きがあります。
一方プロゲステロンには、むくみやすくなる、便秘になりやすくなる、精神状態の不安定化といった働きがあります。
女性の生理が始まると、これらのホルモンバランスに乱れが生じ、精神状態が不安定になりやすくなってきます。この期間中は体組成計の測定値にも乱れが生じ、筋肉量が減り体脂肪が増えたような数値となる場合が多いですが、これは生理が終われば数値も元に戻ります。
そのため、ボディメイク中の女性に対しては事前に「体脂肪が増えて見える期間が毎月ある」ことを伝え、いつものコントロールされた食事を続けていれば問題はないことをしっかりと説明しておくことが大切です。

【甲状腺ホルモン】
このホルモンは、全身の代謝を上げ、脂肪燃焼や筋力の維持・強化などを行う、ボディメイクにおいても重要な役割を担っています。このホルモンが過剰に分泌されると、全身の代謝が異常に上がってしまい、落ち着きがなくなり、疲れやすく、たくさん食べているのに空腹感が無くならず体重が減少するなどの状態となります。一方、このホルモンの分泌が不足すると、全身の代謝が低下し、動作が鈍くなり、筋力も低下し、食欲が無くあまり食べていないのに体重が増加するなどの状態となります。そのため、このホルモンの分泌に異常があり、治療をしている方へのボディメイクのプランニングには細心の配慮が必要となります。

まとめ

前回に引き続き、生理学について解説をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。生理学という学問は内容が細かく、覚えること、理解することが非常に多く、習得にとても時間のかかる学問だと感じています。ただ、この生理学という土台となる知識を固めることで、パーソナルトレーニングにおけるあらゆるシーンにおいて、しっかりとした根拠を基に、自信を持って指導できるようになるはずです。
ここまで、2回にわたり非常に長い内容となりましたが、最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。

清水祥永

コラムを書いた人
清水祥永

トレーナーズラボ第18期生の清水祥永です。

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