コラムを書いた人
茅野宏志郎
トレーナーズラボ第6期生の茅野宏志郎です。
皆様は「生理学」という学問をご存知でしょうか。
日本生理学会は次のように述べています。
生きている仕組み、はたらき、理(ことわり)は全て生理なのです。日本生理学会では体の基本的な機能と仕組みを解き明かそうとしています。
(日本生理学会HPより引用)
我々が生きている仕組みを研究する学問が「生理学」です。
人の体の仕組みを理解しているパーソナルトレーナーからの提案は、信用に値すると思いませんか?
筆者は、「生理学」はパーソナルトレーナーに必須な学問だと考えています。
そこで、パーソナルトレーナーに必須な「生理学」の内容について解説していきます!
皆様は「ATP」という言葉を聞いたことがありますか?
「ATP(Adenosine Triphos Phate)」は人間が体を動かす際に消費するエネルギー体です。これを使用することで、人間は体を動かしています。
ATPは異化作用という、大きな分子を小さな分子に分解し、エネルギーを放出する働きによって作られます。
※異化作用と反対の働きに同化作用というものがあります。小さな分子を大きな分子に合成する働きです。
ATPは主に筋肉で使われます。上腕二頭筋や大胸筋などの「横紋筋」をはじめ、内臓や消化器官、血管を構成する「平滑筋」、心臓から血液を送り出すための「心筋」など、多くの場面で使われます。
内臓や血管や消化器官で使われていると聞くと、どれだけATPが重要なものかよくわかると思います。
継続的な筋活動を行うには、ATPの再合成が必要です。ではATPはどのように再合成されるのか。
3つのATPを再合成する仕組みを紹介します。
まず一つ目は「ホスファゲン機構」です。
ATPは筋肉などで使用されると、リン酸(P)を消費して、ADPという物になります。ホスファゲン機構は、そのADPをATPに戻す機構です。
肝臓から、クレアチンリン酸という物質が排出され、それがADPにリン酸を渡すことで、ADPがATPになります。
リン酸を離したクレアチンリン酸はクレアチンとなり、再度クレアチンリン酸となるか、尿で排出されます。
筋トレをしている人が、健康診断でクレアチン濃度が高く出るのはそのためです。
ホスファゲン機構はATPを作る速度がとても速いため、動き始めの約6秒で主に活動しますが、ATPの生産量は多くありません。
2つ目は「解糖系機構」です。
解糖系機構はその名の通り、糖(グルコース)を分解してATPを作る、細胞内の細胞質で活動している機構です。
グルコースが分解されると、ピルビン酸になります。
ピルビン酸は酸素が十分ではない状況下では乳酸に変換され、その際にATPが作られます。ホスファゲン機構より多くのATPが作られるため、ホスファゲン機構より長い運動の際に主に働きます。(6秒~2分程)
このことから、今までの通説であった「疲れると乳酸が溜まる」というのは間違いであることがわかります。乳酸が作られることで筋肉が活動できるというわけです。
ピルビン酸は、酸素が十分にある状況下では乳酸にはならず、ミトコンドリアに輸送され、その過程でATPが生産されます。この生産方法は、先ほどの生産方法より遅く、より多くのATPを作ります。
そのため、先ほどの生産方法より長時間の運動で主に活動します。(2~3分)
ミトコンドリアに運ばれたピルビン酸はTCA回路(クエン酸回路)に入ります。ここでATPを生産するのが3つ目の機構、酸化機構です。
何もしてない時や、3分以上の長時間の運動をしている時に主に活動します。
ここで、脂質とタンパク質がエネルギーとして使われ始めます。
何もしていない時は、脂質70%糖質30%の割合で使われ、運動時は糖質→脂質→タンパク質の順で利用されます。
酸化機構はとても多くのATPを生産しますが、3分以上の運動で活発になるため、脂質を利用するには長い時間の運動が必要になります。
酸素がないと酸化機構に入らないため、短時間の運動では脂肪の消費が起こりにくいです。なのでダイエットには有酸素運動が有効である、という訳です。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は少し専門的な内容になってしまいました(笑)
しかしながら、これらは生理学の予備知識です。まだまだ知っておかなければならないことが多くあります。
勉強あるのみです!!!
次回はvol.2です。糖新生や運動強度、ホルモンについてお話します。
次回もよろしくお願いします!