パーソナルトレーナーはどんな勉強をしているのか? NSCA-CPTの資格試験のこと、受験方法、合格率、試験内容について。

お読みいただいてありがとうございます。
 パーソナルトレーナーの伊藤政洋です。
 このコラムでは、NSCA-CPTの資格を取得するために必要な手続き、費用、受験方法から、試験内容の概略などをご紹介しています。
 これからパーソナルトレーナーになろうとしている方々が資格取得のための参考としていただければ幸いです。

 また、一般の方にとっても、NSCA-CPTを持っているパーソナルトレーナーが、どんな勉強をしている人たちなのか、知っていただくきっかけとなれば幸いです。

1、受験までに必要な行動

STEP1:NSCAジャパンの会員になり、教材を購入する。

 前回のコラムでもお伝えしましたが、NSCAとはトレーニングとコンディショニングに関する国際的な研究・教育機関であり、NSCAジャパンはその日本支部です。
 NSCAジャパンのホームページから会員登録をするとどなたでも会員になることができ、会員になることがNSCA-CPTの資格を取得するための最初の条件となります。
 正会員になるためには年会費が¥13,200-(税込)必要となります。

画像10を拡大表示

 NSCAジャパンの正会員になれたら、会員専用サイトにて受験の申し込み手続きや、必要な教材を購入したり、NSCAの最新の研究成果にアクセスすることができるようになります。
 まずは下記2点の教材を購入し、学習を進める準備を整えましょう。
○NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識第2版(教科書)   ¥11,800-(税込)
○NSCA-CPT受験用問題集セット(問題集とDVDのセット)     ¥9,900-(税込)
  ※発送手数料がかかります。私の場合は¥880-でした。

画像1を拡大表示

STEP2: 「有効なCPR/AEDの認定者」となり認定証をもらう。         

 CPR/AED認定者とは、心肺蘇生法やAED(自動対外式除細動器)の操作方法の訓練を受け、正統な機関から認定を受けた人のことを言います。
 もっとも身近なのは、各地域の消防本部・消防署が実施している普通救命講習がこれにあたります。

画像11を拡大表示

 お住まいの地域の消防本部・消防署に問い合わせると実施予定の日時や内容の概略などを教えてもらえ、参加予約することができます。
 約3時間程度の講習会で費用はかからず、どなたでも参加することができますので、一般の方にもお勧めです。

小データを拡大表示

STEP3:学歴証明書を用意する。

 私の場合は高卒ですので、卒業した高校へ実に久しぶりに訪ねて行って、卒業証明書を発行していただきました。
 これについては皆さんそれぞれご自分が最後に所属していた教育機関へ問い合わせていただければよいと思います。
 NSCA-CPTの受験資格は高等学校卒業者または高等学校卒業程度認定者以上です。

STEP4:NSCAジャパンのWEBサイトで受験の申し込みをする。

 会員専用サイトにて、NSCA-CPTの資格試験の出願フォームへ進みましょう。
 必要な個人情報を入力して、受験料の払い込みをします。
 受験料は¥46,000-(税込)です。
 
 次に、サイト上での申し込み手続きと同時進行で、NSCAジャパン試験担当窓口へ必要書類を郵送しましょう。
 試験担当窓口の住所はNSCAジャパンWEBサイトに明記されています。
 必要書類はSTEP2とSTEP3で取得した書類、つまり私個人の場合は下記の2点です。
 ○CPR/AED認定証 = 普通救命講習終了証(コピーを提出)
 ○学歴証明書   = 高等学校卒業証明書(本紙を提出)
 ※郵送の際に、NSCA会員番号を記載したメモを同封します。

 受験料の支払いが完了し、必要書類が試験担当窓口へ届き、不備がないことが確認された時点で、出願完了となります。
 NSCAジャパンから申し込み完了のお知らせメールが届くので確認しておきましょう。

キャプチャを拡大表示

STEP5:ピアソンVUEで試験日の予約をする。

 実際の試験はNSCAジャパンそのものが実施するのではなく、米国の試験管理会社であるピアソンVUEが代行して実施します。
 そのためSTEP4で受験の申し込みが完了すると間もなく、ピアソンVUEから試験予約に関する案内メールが届きます。

 メールの案内にしたがって、ピアソンVUEのWEBサイトから受験の日程と試験会場の予約手続きを行いましょう。
 ピアソンVUEは全国各地にテストセンターを管理運営しており、皆さんがお住まいの地域から最も近い試験会場を選ぶことができます。
 (私の住む函館は小さな街ですが、テストセンターが1箇所あって助かりました。
  てっきり東京に行かなければ受験できないのかと思っていました。)

【注意】できるだけ早く行動しよう!

 STEP1からSTEP5まで完了するまでには、意外とたいへんで時間もかかります。
 慣れない作業で混乱してきますのでじっくり一つ一つSTEPをクリアしていきましょう。
 無事に出願手続きが完了しても、受理するほうが数週間かかったり、都合の良い試験日程が埋まってしまったりという事態もありえますので、できるだけ早く行動しましょう。

【注意】かかるお金の再確認

① NSCAジャパン年会費 ¥13,200-
② NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識第2版(教科書)                    ¥11,800-(税込)
③ NSCA-CPT受験用問題集セット(問題集とDVDのセット)      ¥9,900-(税込)
  ※発送手数料がかかります。私の場合は¥880-でした。
④ 受験料 ¥46,000-(税込)

 ①から④全部合計で、¥81,780-(税込)必要となります。
 万が一、不合格となってしまって受験しなおす場合は再び受験料¥46,000-がかかってしまうので、なんとか一回で合格したいですね。

2、試験の概要

【1】試験の方式

 NSCA-CPTの試験は、紙と筆記具を使うことはありません。
 テストセンターに備え付けのコンピューター画面に、試験問題と選択肢が表示されるので、画面上で回答を選択してすすめていきます。
 画像や動画を用いた設問も25問~35問程度出題されます。

○ 選択肢の数・・・3択式
○ 試験時間・・・・3時間
○ 出題数・・・・・155問(そのうち15問はノンスコアード問題)
○ 合格率・・・・・75%(2020年実績)

※ノンスコアード問題とは、全問題数155問のなかに15問だけ点在しており、採点はされず、合格・不合格に影響しない問題です。
 どの問題がノンスコアードなのかは受験者にはわからないので、受験者はあくまでも全問題に全力で取り組む必要があります。
 ノンスコアード問題は、既存の問題とは類似しない新しい問題であり、将来の試験問題を新たに開発し、アップデートしていくための情報収集として機能しています。

【2】出題範囲

 出題範囲は以下の4つの分野に分けられ、それぞれ問題数の配分がなされています。

画像4を拡大表示
画像5を拡大表示

【3】各出題分野の概略と勉強するべきこと

 1 、クライアントに対する面談と評価      (出題数35問)

A 初回面談

 初めてお会いするお客様とよく話し合い、お客様の課題、または抱いている理想やご要望、目標などを共有し、パーソナルトレーナーとお客様との適合性や施設が提供できるサービスとの適合性を確認していくための基礎を学びます。
 また、インフォームドコンセントや、契約書の作成・締結など、パーソナルトレーナーとしてのサービスを開始するための実務について学びます。

B 既往歴と健康評価
 お客様の健康状態を理解し把握するための医学的な基礎知識を学ぶとともに、健康/医療質問票や生活習慣質問票などを活用し、効果的にカウンセリングを実施することによって、注意するべき危険因子の有無を見極める能力を身につけていきます。
    
C 体力評価
 さまざまな体力テストの方法と、得られた結果に対する評価基準を学びます。
 これらの知識を身につけることによって、お客様の現状を確認し、目標を達成していただくための効果的なプラグラムをプランニングしていくためのスタートラインに立つことができます。

D 基礎的な栄養調査
 お客様の健康な体づくりを支える最適な食事についてアドバイスを差し上げるために必要な栄養学の基礎を学びます。
 脂肪燃焼にしても筋肉を育てるにしても、その時々のお客様の体調を見ながら最適な栄養バランスを見極めて、共に食事をコントロールしていくことがパーソナルトレーナーにとって最も大切な業務の一つとなります。

 お客様の体質や、疾病などによっては栄養管理に特別な配慮が必要とされるときもあり、ときにはパーソナルトレーナーの知識と職分を越える場合も想定されます。
 そのようなときは管理栄養士などの、より高度な専門職と連携してお客様を支えてゆく方法も学ぶ必要があります。

画像6を拡大表示

2、 プログラムプランニング (出題数43問)

A 目標設定
 前段階の面談と評価で得られたお客様の各情報をもとに、パーソナルトレーナーの専門知識を発揮し、お客様が理想とする健康状態へと到達するための具体的な目標設定を行うためのテクニックを学びます。

 お客様がみずから食習慣、生活習慣を整えてトレーニングを継続するためには、相当なモチベーションが必要です。
 パーソナルトレーナーはお客様が途中で心折れることなく、目標を達成していく喜びを感じて行くために、常に精神的な支えとなっていかなければなりません。
 そのために必要とされるコーチングテクニックや心理学の基礎をここで学びます。

B プログラムデザイン
 お客様の身体的な特徴、体力、現状をよく把握し目標を明確にすることができたら、その目標を達成するために最適なエクササイズを選定し、頻度や強度などを決めていく段階へと移行していきます。

 特異性、過負荷、バリエーション、漸進性など、トレーニングの原理原則を学び、お客様が安全にエクササイズを継続し、効率的に目標を達成できるようご案内するためのプログラムデザイン能力を身につけます。

C トレーニングに対する適応
 エクササイズによって起こる身体構造や体組織の変化について学びます。
 つまり、レジスタンストレーニングや有酸素性トレーニングが、筋肉、腱、骨、脂肪組織、または心臓呼吸器系、内分泌系などにどのような変化をもたらすのか、生理学の学習を通じて理解を深めます。

 この知識をもとに、お客様の心身の変化に応じてプログラムを微調整し、最適なエクササイズをご提案するとともに、オーバートレーニングによる傷害の発生を未然に防ぎます。

D 特別なクライアント
 お客様はいつも頑健な成人とはかぎりません。
 ご高齢の方、若年の方、妊婦の方など、それぞれに特性があり個別のアプローチでエクササイズを的確に選択しなければ、危険につながるケースもあります。

 その他、精神的疾患、整形外科的疾患、心臓血管系疾患など、ハンディキャップを背負いながらも健康増進への意欲を持たれてエクササイズに取り組む方もおられます。
 パーソナルトレーナーは、そのような方々の特性を学び、禁忌と適応を理解することによって、健康増進をお助けするとともに、自身の知識と職分を越える医学的問題に直面した際には、より適切な健康管理専門職へ引き継ぐ判断力を身につけるために、このセクションで学ぶ必要があるのです。

様々なクライアント 小データを拡大表示

3 エクササイズテクニック (出題数43問)

 パーソナルトレーナーは、各種エクササイズを正しく行う方法を自身で体得しているのはもちろんのことですが、もっとも重要なのはお客様が安全で効果的なエクササイズ方法を身につけていただけるようにご案内する能力です。

 このセクションでは、解剖学の基礎とともに、力学の諸原理を用いて生体組織の機能を理解するバイオメカニクスについて学びます。
 これらの基礎知識を、多種多様なエクササイズに当てはめることによって、効果的な取り組み方や安全性のガイドラインを構築する力を養います。

 レジスタンストレーニング(マシン、フリーウエイト、自重等)、柔軟性エクササイズ、美容体操、競技特異的エクササイズ、有酸素性トレーニング(マシンを使うもの、使わないもの)など、学ぶ項目が多いセクションですが、上記の解剖学とバイオメカニクスを基に理解を深めて行きます。

画像8を拡大表示

4 安全性、緊急時の手順、および法的諸問題   (出題数19問)

A 安全な手順
 安全で快適なエクササイズ環境を設計したり、維持していくのもパーソナルトレーナーの大切な業務です。
 機器の配置や間隔、通路やトレーニングエリアの選定など、たくさんの経験則から培われた業界の安全基準を学ぶことによって、施設の管理運営のみならずお客様がホームジムを構築する際のアドバイザーとしても貢献することができます。

B 緊急時の対応
 お客様が体調を崩し、危険な状態に陥った際でも、パーソナルトレーナーは冷静に最善の対応をすることによってお客様をお守りしなければなりません。
 CPR/AEDの習熟はもちろんのこと、災害発生時や医療機関連携時などの緊急時対応計画について学びます。

C 専門職としての法的、倫理的責任
 セッションを重ね信頼関係が深まるごとに、パーソナルトレーナーはお客様の日常生活や心身活動・既往歴の詳細まで知るケースがあります。
 これらは最重要個人情報であり、絶対的に守秘されなければなりません。
 このセクションではパーソナルトレーナーの専門職としての法的、倫理的責任を明確にし、お客様の信頼を得られる実務について学びます。

画像9を拡大表示

3、まとめ

 これまで見てきましたようにNSCA-CPTの認定試験に臨むためには、たいへん多岐にわたる学習が必要となります。
 パーソナルトレーナーとしてより実用的な知識と応用力、分析力を備えていることをテストし、お客様の健康と体力増進に関わる目標達成を手助けできるレベルに達していることを認定するものですから、これだけ多岐にわたるのも当然でしょう。

 しかし、NSCAでは学習を進めやすいように各セクションごとの解説講義を収録した動画や、効果的に抽出した問題集などを作成し、志す人の学びを支援していますので、チャレンジしやすい試験と言うこともできます。
 またトレーナーズラボでは、講師や同僚、先輩達と情報を共有しお互いに切磋琢磨しながら学習を進めることができるので、合格への近道を歩む事ができます。
 
 よく、資格の取得は本当に必要なのか疑問を投げかける声を耳にします。
 お客様の満足が得られればそれでいいだろうと、日本の国家資格ではないのだから必要ないという意見もあるようです。

 確かに、相当な労力と勉強期間、お金もかかることですので、すでに実力があり上手にビジネスができる方には必要のないことなのかもしれません。
 また、どんな仕事でも本当の実力を身につけるためには、現場へ出て数々の経験を積み重ねていくほかはないと思います。

 しかし私にとっては絶対必須の資格試験であると考えるのです。
 資格試験に臨む学習とは、長年にわたって積み重ねられてきた先人達の知識と経験を学ぶことです。
 パーソナルトレーナーの職務は、お客様の人生に素晴らしい変化が訪れるようお助けし、ときには命にも関わる取り組みですので、学ぶことは多く、また学びに終わりはありません。

 たった一人でゼロから学び始めるのではなく、先人達の積み重ねた土台の上からスタートを切れるのは幸せなことです。
 お客様をサポートするのはたった一人のパーソナルトレーナーですが、決して一人で向き合っているわけではないということでもあります。
 NSCAという世界最大規模の健康運動団体の知識と経験を共有し学び続けることができるのですから。


 おわりに

 以上がパーソナルトレーナーに求められる資格、NSCA-CPTを取得するまでの具体的な行動と、試験内容のご紹介でした。
 たくさんのことを学ぶのはたいへんなこともあるかもしれませんが、パーソナルトレーナーを志す皆さんであれば、一つ一つの内容がとても興味深く、楽しく学べる内容が凝縮されていますので、ぜひチャレンジしてみましょう。

 一般の皆さまも、もしご自身の健康増進のためともに歩むパートナーをお探しであれば、ぜひNSCA-CPTを取得している認定パーソナルトレーナーをご指名ください。
 
 パーソナルトレーナーの伊藤政洋がご案内いたしました。
 最後までお読みいただいてありがとうございました。

伊藤政洋

コラムを書いた人
伊藤政洋

トレーナーズラボ第14期生の伊藤政洋です。

instagram