パーソナルトレーナーが知っておくべき知識「生理学(ATPを中心に)」VOL.1

なぜ、パーソナルトレーナーが生理学を学ぶべきでしょうか。
それは、人間はどのようにエネルギーを作り出しているかを理解することで、効果的なトレーニングプログラムを作成することが出来るからです。
例えば、筋トレの目的によって、どれくらいの重量や回数で実施するのが最適かの判断が出来るようになります。
つまり、お客様のボディメイクを成功に導くための大切な知識になります。

●目次

#1 代謝って何?「異化と同化」
#2 筋活動に必要なATP
#3 ATPを蘇らせる方法1「ホスファゲン機構」
#4 ATPを蘇らせる方法2「解糖系機構」
#5 ATPを蘇らせる方法3「酸化機構」

#1 代謝って何?「異化と同化」

身体を動かすにはにはエネルギーが必要です。
そのため人間は、食物(糖質、タンパク質、脂質)を生体内で利用可能なエネルギーに変換する機能が備わっています。
そして代謝とは、①物質を分解してエネルギーを獲得する、②エネルギーを使って物質を合成する、という2つのことを指します。


①は「異化作用」といい、

例えば、炭水化物がグルコースに分解されるような、大きな分子から小さな分子へ分解される過程でエネルギーが放出されることが挙げられます。


②は「同化作用」といい、

例えば、アミノ酸からタンパク質が合成されるような、エネルギーを使って小さな分子を大きな分子に合成することが挙げられます。

#2 筋活動に必要なATP

「異化作用」によって三大栄養素から作り出されたエネルギー体をATP(アデノシン三リン酸)と言います。
アデノシンという物質に3つのリン酸基が結合したものです。(ATPのTはTri=3という意味!)
十分なATPの供給がないと、筋活動と筋の成長が行われなくなります。
ただ、体内には限られた量のATPしか蓄えられない為、筋活動を継続するには、ATPの再合成が必要になってきます。
そこでATPを再合成させる3つの機構が登場です。


①ホスファゲン機構
②解糖系機構(速い解糖・遅い解糖)
③酸化機構

#3 ATPを蘇らせる方法1「ホスファゲン機構」

「ホスファゲン機構」は、すべての運動開始時に動員される機構です。
ざっくり言うと、ATPとクレアチンリン酸の化学反応が起きる機構です。
ATPはエネルギーとして一度使われると、ADP(アデノシン二リン酸)に変化します。(ADPのDはDi=2という意味!)
そこで、肝臓に蓄えられているクレアチンリン酸は、ADPにリン酸基を供給することでATPを生産します。
ただ、ATPとクレアチンリン酸は筋に少ししか蓄えられていない為、長時間の運動では十分なエネルギー供給が出来なくなってしまいます。
そうなると、解糖系機構の助けが必要となってきます。

#4 ATPを蘇らせる方法2「解糖系機構」

「解糖系機構」は、筋に蓄えられたグリコーゲンまたは血中にあるグルコースといった炭水化物をピルビン酸や乳酸に分解してATPを作り出します。
解糖系には、「速い解糖」と「遅い解糖」の2つのルートが存在します。


「速い解糖」は、最終産生物質であるピルビン酸を乳酸へと変換します。
「遅い解糖」は、ピルビン酸をミトコンドリアで運び、「酸化機構」のもとでエネルギーになります。


細胞内に酸素が十分あれば、乳酸を貯めずに、「遅い解糖」が利用されます。
ちなみに「乳酸」といえば疲労物質というイメージがありますが、最近では、細胞中のpHが低下することが疲労の一因と考えられています。
「乳酸」は血液を介して肝臓に輸送され、グルコースに変換され、エネルギーとして再利用されます。

#5 ATPを蘇らせる方法3「酸化機構」

「酸化機構」は、安静時と有酸素性運動時にATPを供給する機構です。
主に、炭水化物と脂質が利用されます。
タンパク質は、長期の飢餓と90分以上の運動で利用されます。

安静時には、約70%が脂質から、30%が炭水化物からATPが供給されます。
よって、基礎代謝が高いと、脂質の減少が期待できます。
そして、運動強度が上がるにつれて、脂質から炭水化物の割合が多くなります。
ただ、炭水化物が足りなくなれば、再び脂質やタンパク質が利用されるようになります。

「遅い解糖」のルートでピルビン酸がミトコンドリアに入ると、アセチルCoA(アセチルコエンザイムA)に変換されます。
また、アセチルCoAは、脂質やタンパク質の代謝からも作られます。
このアセチルCoAは「TCA回路」というサイクルに入ります。
このサイクルで作られたNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とFADH2(フラビンアデニンジヌクレオチド)という分子を用いてATPが作られるという流れです。

少し最後は難しい話になりましたが、運動強度や運動時間によって、ATPの供給機構が決定するということが分かれば良いかと思います。

次回は・・・・・・
生理学VOL.2です。
糖新生と運動強度、そして知っておくべきホルモンについてまとめます。

清水優美恵

コラムを書いた人
清水優美恵

トレーナーズラボ第2期生の清水優美恵です。

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